科学技術論文の書き方 表 紙 目 次 |
文章の構成要素
数式・数字の利用文章の構成要素
数式・数字の利用数式は自然科学において全世界に通用する共通言語である. 私はフランス語は知らないし,ドイツ語は第二外国語として4単位取った筈だが, 初めてドイツに行ったときに某公共施設において “Herren” と “Damen” を間違えて入ってしまった程度のものである. それでも,フランス語やドイツ語,はてはロシア語の論文でも, 数式を追って行けば何となく論旨が理解できる. 自然科学系の古典論文の中にはフランス語・ドイツ語・ロシア語で書かれた重要な論文が数多くあり,見ないわけにはいかないことがしばしばである. そう,だからこそ,数式は自然科学論文においては極めて重要なのである. 美しい論理展開で美しい数式を書こうではないか. ISO で定められた世界共通語 (ISO 31-11) である数式にも僅かながら例えば次のような「方言」があるが, 殆どの場合は問題とならない.
数字の基本的な書き方文字種必ず半角数字を用いる. 全角数字は恥ずかしいのでやめよう.
カンマ・小数点頭痛のする値札を見たことはないだろうか?
しかし,日本ではこの言い逃れは効かない. “.” はあくまで小数点,“,” はあくまで1000倍単位のカンマなのである. インラインにするかどうか(to be written)困った人たち工学部,特に電気・電子・情報系の学生に多い数式の書き方. 困ったものだ.畳み込み (convolution)(×)
頼むから止めてくれ. こんなこと書いた論文が私の所に査読に回ってきたら, 「* は畳み込みですか?」 と書いて突っ返すぞ. 電気工学・電子工学を専攻する学生なら畳み込みは習っているはずなのだがなぜだろう... (◯)
ほとんどの場合,積記号 “⋅” は書く必要はない. 次の「変数の積」問題と密接に絡み, 多文字変数名を使おうとするから積記号が必要になってしまうのである. (×)
これも頼むから止めてくれ. こんなこと書いた論文が私の所に査読に回ってきたら, 「× は外積ですか? すると 他の変数もベクトルですか?」 と書いて突っ返すぞ. もちろん,⋅, × は積記号ではあるが,スカラーの積は演算記号を省略するのが常であり,とりたてて記号を使用されると無用の誤解を生じてしまうのである. 変数の積(×)
頼むから止めてくれ. こんなこと書いた論文が私の所に査読に回ってきたら, 「Rcylinder という積項を構成している R, c, y, l, i, n, d, e, r はそれぞれ何を表しているのですか?」 と書いて突っ返すぞ. 数式において積記号 “⋅” を省略することが常識である以上, いくら「 Rcylinder はシリンダーの半径」と書かれていても, Rcylinder が9変数の積 R⋅c⋅y⋅l⋅i⋅n⋅d⋅e⋅r でないということは自明ではない. 変数は「1文字」で表すこと. ただし,添字として単語を使用することは可能である. (◯)
R がイタリック,cylinder が下付き添字 (sub-script) でローマン体になっていることに注意してほしい. LaTeX の場合はマークアップ方法に注意:
宙ぶらりんな数式数式は文の一部であるときと,そうでないときがあるが, ポリシーをもってあたること.(◯) [これは文の一部として現れている.]
(×) [文が完結していない]
(◯) [これは文の一部ではなく単独で現れている.]
なお,英文では,式はその文の一部であり,式で文が終了するときはその右にピリオド "." を置くのが正式である. (×)
→ (◯)
さらに文法 (英文正書法) としてカンマ "," を使用する場合の例は次の通りである. (×)
→ (◯)
マイナス記号の憂鬱数式は,(a) いわゆるワープロ機能でシコシコ作成する人,(b) TeXを使用する人,(c) 数式エディタ(M$Wordなどの)を使用する人がいるだろう. (a) の人にはご苦労様なことで,と言わせていただく. (b) の人には「多分」(TeX の流儀で書いていれば) この項に書かれていることは気にしなくてよい. (c) の人には,ソフトがなくなったら再利用できるの?と言わせていただく. 私自身はもちろん (b) である. (a),(c)の人を非難する気はないが,本文でインライン数式を使用するとき,たとえば
とすることがある. この問題点がお分かりだろうか. そう,マイナスの符号である. (1) は,"Timesの半角ダッシュ" を使用したもので「短すぎる」, (3) は,"全角のマイナス" を使用したもので「長過ぎるとともになぜ全角なの?」,である. なんと汚い (見た目,とともに,論理構造として) ことか... Timesを始めとした欧文フォントの殆どにはダッシュではないマイナス記号がきちんと定義されている. Wind○ws の場合はどうかは知らないが, Mac OS の場合,Times系フォントにして,いわゆるダッシュ “-” そのままではなく, “[option] -” として入力してみよう(百聞は...). ただし,(2) の表示例では htmlの “−” を使用している.
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