文章の構成要素 > 数式・数字の利用 [科学技術論文の書き方]

科学技術論文の書き方
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数式・数字の利用

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数式・数字の利用

数式は自然科学において全世界に通用する共通言語である. 私はフランス語は知らないし,ドイツ語は第二外国語として4単位取った筈だが, 初めてドイツに行ったときに某公共施設において “Herren” と “Damen” を間違えて入ってしまった程度のものである. それでも,フランス語やドイツ語,はてはロシア語の論文でも, 数式を追って行けば何となく論旨が理解できる.

自然科学系の古典論文の中にはフランス語・ドイツ語・ロシア語で書かれた重要な論文が数多くあり,見ないわけにはいかないことがしばしばである. そう,だからこそ,数式は自然科学論文においては極めて重要なのである. 美しい論理展開で美しい数式を書こうではないか.

ISO で定められた世界共通語 (ISO 31-11) である数式にも僅かながら例えば次のような「方言」があるが, 殆どの場合は問題とならない.

  • ≈ v.s. ≒ (≒ の方が方言)
  • ≤ v.s. ≦ (≦ の方が方言)
  • ≥ v.s. ≧ (≧ の方が方言)

数字の基本的な書き方

文字種

必ず半角数字を用いる. 全角数字は恥ずかしいのでやめよう.
  • × 誤差は 0.012% であった.
      ◯ 誤差は 0.012% であった。

カンマ・小数点

頭痛のする値札を見たことはないだろうか?
  • 安い! 1.980円!
2円でお釣りがくるのか? 困ったものだ. どうも日本人はカンマとビリオドに鈍感である。 欧米に行くとこういう値札を見る.
  • €1,98 /lbl.
  • $ 2.00 ea.
これは欧米人が小数点・コンマの使い方に鈍いのではない. ユーロもドルも1/100の補助単位としてセントがある. そして “.”“,” は小数点として使用しているのではなく, 主単位と補助単位の間の区分記号として使用しているのである. だから、その場合の “.”“,” の右側必ずには 0 パディングされた 2 桁数字がある.

しかし,日本ではこの言い逃れは効かない. “.” はあくまで小数点,“,” はあくまで1000倍単位のカンマなのである.

インラインにするかどうか

(to be written)

困った人たち

工学部,特に電気・電子・情報系の学生に多い数式の書き方. 困ったものだ.

畳み込み (convolution)

(×)
円の面積 S は次のように表される.

 S = π * r 2      (1)

頼むから止めてくれ. こんなこと書いた論文が私の所に査読に回ってきたら, 「* は畳み込みですか?」 と書いて突っ返すぞ. 電気工学・電子工学を専攻する学生なら畳み込みは習っているはずなのだがなぜだろう...

(◯)
半径 r の円の面積 S は次のように表される.

 S = π r 2      (1)

ほとんどの場合,積記号 “” は書く必要はない. 次の「変数の積」問題と密接に絡み, 多文字変数名を使おうとするから積記号が必要になってしまうのである.

(×)
円の面積 S は次のように表される.

 S = π × r 2      (1)

これも頼むから止めてくれ. こんなこと書いた論文が私の所に査読に回ってきたら, 「× は外積ですか? すると 他の変数もベクトルですか?」 と書いて突っ返すぞ. もちろん,, × は積記号ではあるが,スカラーの積は演算記号を省略するのが常であり,とりたてて記号を使用されると無用の誤解を生じてしまうのである.

変数の積

(×)
円の周囲長 L は次のように表される.

 L = 2 π Rcylinder   (1)

ここに Rcylinder はシリンダーの半径である.

頼むから止めてくれ. こんなこと書いた論文が私の所に査読に回ってきたら, 「Rcylinder という積項を構成している R, c, y, l, i, n, d, e, r はそれぞれ何を表しているのですか?」 と書いて突っ返すぞ. 数式において積記号 “” を省略することが常識である以上, いくら「 Rcylinder はシリンダーの半径」と書かれていても, Rcylinder が9変数の積 R⋅c⋅y⋅l⋅i⋅n⋅d⋅e⋅r でないということは自明ではない. 変数は「1文字」で表すこと. ただし,添字として単語を使用することは可能である.

(◯)
円の周囲長 L は次のように表される.

 L = 2 π Rcylinder   (1)

ここに Rcylinder はシリンダーの半径である.

R がイタリック,cylinder が下付き添字 (sub-script) でローマン体になっていることに注意してほしい.

LaTeX の場合はマークアップ方法に注意:

  1. × $ Rcylinder $
  2. × $ R_{cylinder} $
  3. × $ R_\mathrm{cylinder} $
  4. ◯ $ R_\mbox{cylinder} $
LaTeX 初心者は (3) と (4) は同じようにタイプセットされると思うかもしれないが, LaTeX では 数式モードとテキストモードでは文字間隔が違うのである! 一度比較してみると良い. 一度比較するともう (3) の組み方が気持ち悪くなるだろう. この気持ち悪いと感じる非科学的な感性は,実は論理的で美しい論文作成に重要なものだと思う.

宙ぶらりんな数式

数式は文の一部であるときと,そうでないときがあるが, ポリシーをもってあたること.

(◯) [これは文の一部として現れている.]
この関数 f(x) は次式,
  f(x) = cos x     (1)

で示される.一方 g(x) は...

(×) [文が完結していない]
この関数 f(x) は次式,

  f(x) = cos x     (1)

一方 g(x) は...

(◯) [これは文の一部ではなく単独で現れている.]
この関数 f(x) は式 (1) で示される.

  f(x) = cos x     (1)

一方 g(x) は...

なお,英文では,式はその文の一部であり,式で文が終了するときはその右にピリオド "." を置くのが正式である.

(×)
The function f(x) is given by

  f(x) = cos x     (1)

On the other hand, the function g(x) is...

→ (◯) 
The function f(x) is given by

  f(x) = cos x.     (1)

On the other hand, the function g(x) is...

さらに文法 (英文正書法) としてカンマ "," を使用する場合の例は次の通りである.

(×) 
The function f(x) is given by

  f(x) = A cos x     (1)

where A is an amplitude.

→ (◯)
The function f(x) is given by

  f(x) = A cos x,     (1)

where A is an amplitude.

マイナス記号の憂鬱

数式は,(a) いわゆるワープロ機能でシコシコ作成する人,(b) TeXを使用する人,(c) 数式エディタ(M$Wordなどの)を使用する人がいるだろう. (a) の人にはご苦労様なことで,と言わせていただく. (b) の人には「多分」(TeX の流儀で書いていれば) この項に書かれていることは気にしなくてよい. (c) の人には,ソフトがなくなったら再利用できるの?と言わせていただく. 私自身はもちろん (b) である. (a),(c)の人を非難する気はないが,本文でインライン数式を使用するとき,たとえば

  • (1) × ここで,a = -1 とおく.
  • (2) ◯ ここで,a = −1 とおく.
  • (3) × ここで,a = -1 とおく.

とすることがある. この問題点がお分かりだろうか. そう,マイナスの符号である. (1) は,"Timesの半角ダッシュ" を使用したもので「短すぎる」, (3) は,"全角のマイナス" を使用したもので「長過ぎるとともになぜ全角なの?」,である. なんと汚い (見た目,とともに,論理構造として) ことか... Timesを始めとした欧文フォントの殆どにはダッシュではないマイナス記号がきちんと定義されている. Wind○ws の場合はどうかは知らないが, Mac OS の場合,Times系フォントにして,いわゆるダッシュ “-” そのままではなく, “[option] -” として入力してみよう(百聞は...). ただし,(2) の表示例では htmlの “−” を使用している.

[拍手]