論文の構成と章建て
書く順序
ここで言う論文を書く順序とは,章立てのうちで,何章から書きはじめるか,
ということである.
論文の構成が,
- タイトル
- アブストラクト
- 第1章 緒言
- 第2章 XXX について
- 第3章 YYYの理論的検討
- 第4章 実験と考察
- 第5章 結言
- 謝辞
- 参考文献
- 付録
であることは上でも述べた.
さて,このリストの上から順に書くのが最適なのだろうか?
私の場合の答はNOである.
「私の場合」と書いたのは,人によって場合によって異なるからである.
以下,適宜自分に当てはめて最適な順序を探してほしい.
- 準備: まず必要なことはこの論文で何を主張するのか,を決定することである.
例えば,「XXXの問題を解決するためにYYYの手法を提案し,それが有効である.」
ことを主張することとしよう.
- 次に仮題をきめる.
上記の場合,「XXXのためのYYYの一手法」のような感じである.
- 参考文献リストを作成する.
本来ならば,論文を書く段階ではなく,研究開始時にサーベイを丹念に
するべきである.
ここで言うリストの作成とは,bibitemの作成と思って頂きたい.
サーベイの段階で読んだ文献を片っ端から書き留めて置くことが望ましい.
- 章建てを決定する.
章・節,場合によっては項のレベルまでタイトルを決定し,
TeXならば chapter, section, subsectionを書いて,
ひとつにつき1,2行の内容をそこに書いておく.
- 図・表を作る.重要な式があれば列挙する.
これらは料理で言えば重要な材料である.
理想的には,これらは論文を書く段階ではなく,研究実行中に書くのがよい.
これらを以下の手順で調理する.
- 以上で論文の骨格ができているので,全体の整合性をよく見て,
「主張」とその「根拠」が「見える」かどうか,を考えよ.
よくできた構成ならば,文章がなくてもこの段階で全体が見渡せるはずである.
- 第n章 結言 を書く.
自分が研究してきたこと,検討してきたこと,結論を書いてみよう.
そこでなし得なかった,今後の課題ももちろん言及する.
- 第1章 緒言 を書く.
結言を導くための導入である.読み手(もちろん査読者を含む)を引き付ける工夫をしよう.
- 理論的検討 を書く.
- 実験と考察 を書く.
結言に書いた結論を論理的に引き出す構成とする必要がある.
- アブストラクト を書く.
アブストラクトを最初に書いても良いが,論文本体が
アブストラクトに引っ張られてしまう恐れがあり,それでは本末転倒である.
私は最後に書くようにしている.
仕上げ
大事なことは,「論文が閉じている」ことである.
閉じている,とは,例えるならば「未解決ラベルが無いこと」または,
「未定義ポインタが無いこと」「未参照実体が無いこと」とでも言えるだろうか.
図番号と参考文献番号の[?](TeXの場合)は論外として,未定義の言葉を使用していないか,
前提の根拠はあるか,いきなり新しい概念を出していないか,などを丹念にみよう.
不足が在ればそれを補完する参考文献を追加すれば良い.
また,同義の言葉・用語を異なる字面で書いていないか.
ひとつの論文の中で,
アルゴリズム | vs | 算法 |
エネルギ | vs | エネルギー |
グラフィックス | vs | グラフィクス |
画素 | vs | ピクセル |
など,様々な観点から統一した記述と用字法を用いること.
熟成
最低1週間,できれば1ヶ月,そっと寝かせておくと,
ワインのように論文が熟成される.
いや,正確に言うともちろん論文は変化しない.
変化するのは著者すなわち貴方の頭である.
まだ判らないかな?
ようするに書いた内容を忘れて,第三者の目で論文を読み直すのである.
すると不思議なことに書いている時には気付かなかった誤字脱字はては
論理的不整合などが「よく見える」のである.
そのためにも,論文は早めに手をつけよう.
上記,論文構成(章建て)だけでも早めに決定しておくと良い.
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