論文の構成と章建て > アブストラクト・緒言・結言 [科学技術論文の書き方]

科学技術論文の書き方
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論文の構成と章建て




アブストラクト・緒言・結言

アブストラクト・緒言・結言は一見,同じような内容と思われがちである. 事実,書いてある内容は同じと思われることも事実であろう. しかし,それらの目的が異なるために内容も同一ではない. ここではアブストラクト・緒言・結言の基本的な考え方を考察する.

アブストラクト・緒言・結言の存在意義

(to be written)

「アブストラクト」

アブストラクトでは貴方の研究の
  • 目的 (何のために)
  • 対象 (何を)
  • 方法 (どうしたら)
  • 成果 (どうなった)
を簡潔に述べる. 段落 (改行) は付けてはいけない. 文の時制は,原則として「現在時制」とする. 社会的背景や他の研究を言及する必要は(殆ど)ない.

例)

本論文では XXX のための YYY による一方式を提案する....
  ・
  ・
  ・
...理論的考察により提案方式の誤差が aa% であることを示すとともに, bbb による実験により従来方式に対する本提案方式の有効性を示す.
In this paper the authors propose a method to...
  ・
  ・
  ・
The error aa% is derived by a theoretical study, and The effectiveness of the proposed method is indicated by an experiment with bbb.

「緒言」

緒言では,次の事柄を読者を引きずり込むようにして書く.
  • その研究の社会的/産業的背景
  • 研究の意義,どうしてそれを研究するのか,それによって何がもたらされるのか
  • その研究の基礎となった研究の列挙 (1st Author と文献引用),概要,本研究との関連性,違い,に基づいた本研究のオリジナリティの主張
  • この論文では何を書くのか,何が示されるのか,何が明らかになるのか
  • 場合によっては特殊用語の説明
  • 論文の構成
また,特に緒言においては読者を引き込むための魅力作りの努力・工夫をせよ. 多くの読者は,タイトルを見,次いでアプストラクトを読み, それで興味を持ったら論文本編を読む. 本編の緒言が興味を引くものでなければ,続きを読んでもらえないであろう. また,いきなり本題に入っても理解できるはずが無い.
  • × (はじめにの冒頭で) 光束追跡法の幾何構造は,...
 これは CG の専門家でもギョッとする書き出しである. 但し,支部大会論文では許される.なぜか考えよ. 対象読者が知っている,あるいは容易に受容できることから始めて「引きずり込む」のである. 「読者が受容できることを引き金にすること」が大事である.
  • ◎ リアルな CG の生成アルゴリズムとして知られる光線追跡法を高速化した方式として光束追跡法[1]がある.その幾何構造は,...
  • ◯ 光束追跡法という高速光線追跡法[1]の幾何構造は,...(「という」の効果)
  • △ 光束追跡法[1]という方式の幾何構造は,...(「という」の効果)

緒言の時制

 原則として本論文の主張点については「現在時制」で, 比較対照となる他の研究成果は「過去時制」,場合によっては「過去完了時制」で書く. 当該論文に直接関係する自分の直近の論文は「現在完了」,場合によっては「現在進行形」とする.

例)
XX らは YY [1]に関する報告をした. 筆者らは既に XX の実験結果に基づいた ZZ 法の基礎検討[2]を行っている. 本論文では ZZ 法[3]を拡張した ZZZ 法を提案する.

「結言」

 結言では,この研究によって得られた新たなる知見をまとめる. 原則として「現在完了時制」で書く. したこと (のみ) をかくのが結言ではない.
  • × 本論文では,shape from X のひとつとして,XXX 特徴から形状推定する手法を提案した.
  • ◯ 本論文では,shape from X のひとつとして,XXX 特徴から形状推定する手法を提案した. その結果,YYY% の精度で推定できることが確かめられた.

 また,本研究でなし得なかった事柄,浮上した問題点を今後の課題として指摘する. 本研究の目論みと外れた,本研究に起因する問題点と,ただ手が回らなかった事柄を 分離して書くとさらに良い.

  • ◯ XXX 特徴ではYYYの場合に形状推定ができないので,その原因を検討する必要がある.さらに,ZZZ 特徴を使用すれば精度向上が期待できるので,今後,両特徴を融合した方式を検討したい.

また,個人的な努力 (プログラム作成のために3日徹夜したとか),作業上の工夫 (vi ではなく Emacs を使用したとか) は本文に書く必要は全くないし,書くべきではない. それは単に君の能力が劣っていることを公表するだけのことである. どうしても書きたければ付録とせよ (卒業論文, 修士論文以外では厳禁).

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